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[めいてつローカーボ生活] 医師 灰本先生のコラム 5

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体重減量にローカーボ食とカロリー制限食はどちらが有効か? その1
はじめに

一般の方々はローカーボ(糖質摂取を制限して脂質摂取を制限しない)とカロリー制限食(主に脂質摂取を制限する)のうち体重減量にはどちらが優れているか、という質問に簡単に答えが出せるように思うかもしれませんが、食事という個人の嗜好性が極めて強い習慣を変えることは並大抵に達成できませんし、その治療法を科学的に比較するのはもっと難しい問題に直面することになります。また、世界的にローカーボ推進派と反対派(カロリー制限食を守る派)にはかなり強い対立と学術的論争が続いており、そのような社会的背景がさらに この問題を複雑化させています。

このコラムでは医学的になにが問題になっているかについて2回にわたって説明します。


食事の効果を研究するとき、乗り越えることができない二つの問題

生活習慣の食生活のどちらが減量に優れているかを科学的にはっきりさせるのは解決困難な根本的な課題を抱えることになります。医学では薬AとBのどちらが減量に有効かという課題を解決するため、たとえば100人を患者の意志とは無関係に機械的にあなたは薬A、あなたは 薬Bと50人ずつに振り分け、半年間飲んで個々の体重の変化をA群とB群で比較する、という方法を採用します。これを無作為化比較試験といいます。簡単に飲める薬ならこのような研究 方法で正確な結果を得られるのですが、食事となるとそう簡単にはいきません。糖質(炭水化物)が大好きで脂を食べるのが嫌いな人がたまたまローカーボ群に割り当てられて、その食事を半年間も続けるのを想像してください。命がかかった病気の患者なら我慢できるかもしれませんが、そうでない場合はせいぜい続いても数週間が限度でしょう。

それにローカーボ食にせよカロリー制限食にせよ、今まで長年慣れ親しんだ食事を大きく変化させるのですから、指導者が必要です。多くの場合、管理栄養士や医師がその役割を果たします。この管理栄養士や医師にとって、私の医院のようにローカーボの方が優れており、それを証明したいという意図で研究を始めた場合と、ローカーボが嫌いな医師(糖尿病学会にはたくさんこのような先生方がいます。)がカロリー制限食の方が優れていることを証明する目的で始めた場合では、それぞれの食事への指導の熱意は大いに異なります。患者がその食事への取り組む熱意は指導者の熱意によって生まれるので、必然的に指導者がひいきにしている食事療法が優れているという結論となりがちです。

したがって、二つの食事の有効性を科学的に比較するのは薬と違ってなかなか難しいのです 。


カロリーを揃えて比較する方法の誤り

このような解決困難な背景に加えて、ローカーボ食とカロリー制限食を比較するときにもう一つやっかいな問題があります。世界のほとんどの研究では1500kcal以下、たとえば1400kcalに固定して二つの食事療法を比較しています。日本人の平均カロリー摂取量は1850kcal(女性で1700kcal、男性では2000kcal)ですから、平均より約400kcal(炭水化物に換算すると100g=ごはん2杯、日本人の1日平均は260g。脂質では40g、日本人の1日平均摂 取量は約50g)も減らすことになります。したがって、空腹感が強く長く続けるのは難しくなり、短期間の実験的研究としては成り立ちますが、長期にわたってその食事療法を実行し続 ける現実の臨床としてはあまり役立たない結果となりかねません。

さらに、ローカーボ派と反ローカーボ派の対立が続いており、それを反映してローカーボ推進派は反ローカーボ派に勝ちたいがゆえに1日のほとんどの糖質を制限する厳しい糖質制限食とカロリー制限食を対決させるという研究デザインとなってしまいます。3食糖質抜きなど現実的に長い期間続けられるわけはありません。したがって、ますます現実の臨床からは遠い研究結果となります。そのような状況でも100編を超えるローカーボ対カロリー制限食の研究論文が発表されています。

次回はその結果についてお話しします。


コラム著者 灰本 元 氏 (はいもと はじめ)

医師、灰本クリニック院長、NPO法人日本ローカーボ食研究会代表理事
1953年山口県生まれ。1978年名古屋大学医学部卒業。関東逓信病院(現 NTT東関東病院)内科レジデント、名古屋大学医学部大学院(病理学)、愛知県がんセンター研究所病理部、中頭病院内科(沖縄市)などを経て、1991年に愛知県春日井市に灰本クリニックを開業。診療の特徴は高血圧、糖尿病、ローカーボ食、癌の診断、漢方医学など。

NPO法人日本ローカーボ食研究会は、ローカーボ(糖質制限、低炭水化物)食による糖尿病・メタボリック症候群の治療を安全に、そして有効に実施する為に2011年3月に灰本氏を中心に設立されました。ローカーボ食の科学的な研究、海外文献の紹介、定期的な研究会開催などを行い、それを基に医療機関だけでなく食品・健康機器関連会社、製薬会社、一般の患者さんへ啓蒙と普及を目的としています。ローカーボ食の有効性だけでなく弱点や課題も含めた総合的な科学情報を提供します。現在、東海地方を中心に10の病院・クリニック等が協賛医療機関として登録しています。

灰本クリニック
http://www.haimoto-clinic.com/

日本ローカーボ食研究会
http://low-carbo-diet.com/


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