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[めいてつローカーボ生活] 医師 灰本先生のコラム 3

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飽和脂肪酸(主に動物性脂肪)をたくさん食べても大丈夫という科学的理由
飽和脂肪酸「敵から味方へ」の大どんでん返し

長く信じられてきた重要な原理が実は間違いだったという大どんでん返しは推理小説や映画で常套手段である。一方、そのような常識の逆転は医学会にもしばしばあって、それは確かに医学の進歩と言えば言えるが、どうしてそんな間違いが数十年もまかり通っていたのか、はなはだ不信に思うこともある。動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸と生命の関係もまさにそのようなどんでん返しであった。世界の栄養学をリードしているアメリカ臨床栄養学会は2014年「飽和脂肪酸:敵から味方へ」というびっくりするようなタイトルの論文を掲載した。


飽和脂肪酸とは

脂肪酸について簡単に解説すると、脂肪は脂肪酸とグリセオールで構成され、グリセオールは分解されてグルコースへ転換して糖代謝に入っていく。それに対して脂肪酸の分解と生成が脂質代謝の中心となっている。脂肪酸には大きく3つの飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価飽和脂肪酸に分類される。そして、飽和脂肪酸は長らく脳心血管障害を増やすので“体に悪い”、つまり人類にとって敵と信じられてきた。

図1に示すように各食品に含まれる脂肪酸は3種の混合であり、動物性脂肪由来の食品には飽和脂肪酸の割合が多いものが多い。したがって飽和脂肪酸=動物性脂肪と誤解されているが、たとえば和牛サーロインは実は一価不飽和脂肪酸も多く含まれており、植物油の代表であるゴマにも飽和脂肪酸は15%も含まれているのである。各食品によって3種類の割合はさまざまである。


飽和脂肪酸をたくさん食べた方が長生き

かつての飽和脂肪酸が悪いという研究の多くが数千人を数年間追跡した小規模であったこと、それに血液中の中性脂肪やコレステロール値が高くなるだけを見ていたことが間違った結果を招いた。本当に脳卒中や心筋梗塞になりやすく早死にするのかを見ていなかったのである。

それに対して2014年までに10万人規模のを10年以上追跡した大規模研究が次々と発表され、それらをまとめてみると脳卒中や心筋梗塞の発症や死亡は、飽和脂肪酸の摂取量がまったく影響しないか、たくさん食べている方がむしろ減るという結果が相次いだ。それが「飽和脂肪酸:敵から味方へ」という衝撃的なタイトルになったのである。

日本では2010年に飽和脂肪酸の摂取量と脳心血管障害による死亡との関係を示す最初の論文が発表された(JACC研究)。それによると5.8万人の一般住民を14年も追跡し、飽和脂肪酸の摂取量を5段階に分けて死因を分析した。なんと飽和脂肪酸を最も多く食べる人は最も少なく食べる人に比べて、脳梗塞(-40%)、脳出血(-60%)、心筋梗塞(-30%)による死亡を大幅に減らすことが明らかとなったのである(図2)。まさに、どんでん返しである。その後、同じくJACC研究は6万人を19年追跡して、飽和脂肪酸を多く食べることは男性の総死亡には影響せず、女性の総死亡を減らすと2014年に報告した。これらの研究によって2010年以降日本人は飽和脂肪酸をもっと多く食べるべきという考えへ大転換したのである。そしてこれら論文には名古屋大学と愛知医科大学の研究者が名を連ねていた。


ローカーボを実践する人たちは安心して動物性脂肪を食べよう

これらの結果は私たち“ゆるやかなローカーボ”を推進する医師や管理栄養士にとってたいへん心強い援軍となった。糖質摂取を制限したことによる不足エネルギーを脂質摂取で補うというのがローカーボの基本的方針であり、食事指導の根幹となっていたからである。飽和脂肪酸や動物性脂肪をたくさん食べてもよいなら、ローカーボメニューは格段に幅広くなり格段に実行しやすくなるのだ。

私は診察室内で図2を患者さんたちへ見せて「もっと脂を食べよう、動物性脂肪はむしろ脳卒中や心筋梗塞を減らすんだ。愛知県の大学が世界に向けて発信したんだよ」、誇らしげに語ることにしている。読者の皆さんもどうぞ安心して飽和脂肪酸が多い食品をたべてください。そしてローカーボに楽しく取り組んでいただけるとうれしいです。


コラム著者 灰本 元 氏 (はいもと はじめ)

医師、灰本クリニック院長、NPO法人日本ローカーボ食研究会代表理事
1953年山口県生まれ。1978年名古屋大学医学部卒業。関東逓信病院(現 NTT東関東病院)内科レジデント、名古屋大学医学部大学院(病理学)、愛知県がんセンター研究所病理部、中頭病院内科(沖縄市)などを経て、1991年に愛知県春日井市に灰本クリニックを開業。診療の特徴は高血圧、糖尿病、ローカーボ食、癌の診断、漢方医学など。

NPO法人日本ローカーボ食研究会は、ローカーボ(糖質制限、低炭水化物)食による糖尿病・メタボリック症候群の治療を安全に、そして有効に実施する為に2011年3月に灰本氏を中心に設立されました。ローカーボ食の科学的な研究、海外文献の紹介、定期的な研究会開催などを行い、それを基に医療機関だけでなく食品・健康機器関連会社、製薬会社、一般の患者さんへ啓蒙と普及を目的としています。ローカーボ食の有効性だけでなく弱点や課題も含めた総合的な科学情報を提供します。現在、東海地方を中心に10の病院・クリニック等が協賛医療機関として登録しています。

灰本クリニック
http://www.haimoto-clinic.com/

日本ローカーボ食研究会
http://low-carbo-diet.com/


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