めいてつローカーボ生活

[めいてつローカーボ生活] 医師 灰本先生のコラム 20

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ローカーボ食指導法の進歩 その3 もっとゆるやかに糖質を減らす


1.夕食あるいは朝夕食で糖質を減らす

糖尿病の重症度(ヘモグロビンエーワンシーの値)に応じて3段階で糖質制限を行い、糖質が減った分のカロリーを脂質摂取量を増やすことによって補う。患者へ糖質が多い食品のリストを渡しこれ以外ならなんでも食べてよい。この方法はきわめてわかりやすいので高齢者や独身男性にも広まっていった。そして、その効果は抜群で薬をほとんど使わずにヘモグロビンエーワンシーを7.0~7.5%まで下げることができた。しっかり実行すればほとんどの患者は薬を使わずに目標値まで到達できたのである。しかも体重は平均で3.5kgも減り、善玉コレステロールは上がり、中性脂肪は下がり、メタボのほとんどはこの食事療法によって解決できた。2005年から2010年までローカーボはまさに順風満帆だった。


2.糖質を減らしすぎると癌が増える

ところが、わたしは一抹の不安を抱えていた。厳しいローカーボを10年~20年継続すると癌や他の病気が増えないのだろうか。わたしの不安は的中した。食事や栄養と病気の関係について世界でもっともすぐれた研究を行っているのはアメリカのハーバード大学公衆衛生学部で、その研究者らが13万人を20年以上追跡してみると糖質を減らすほど男で癌死と心筋梗塞死、女で癌死が増えるという結果を2010年に発表したのだ。

当時、日本では3食とも全部糖質を抜くという厳しいローカーボが横行し、それに危機感を感じていたわたしはいち早くこの論文を日本語に翻訳、NPOローカーボ食研究会のホームページに掲載して厳しいローカーボを続けないように警鐘を鳴らした。


3.糖質の減らしすぎを予防する

一方、これら海外の研究に影響を受けたわたしたちは、もっとゆるやかに制限してもヘモグロビンエーワンシーを下げられる食事指導法の開発に迫られた。

日本人男性は平均300g/日、女性は260g/日 食べている。これまでの指導法で十分な効果があったにせよ、あまりにおおざっぱなのでグラム単位の指導ができないものか。そのような目的で、患者さんの治療開始前と6ヶ月後の食事日記を調査・比較してみた。その結果、夕食だけ1日おき、夕食から毎日、朝夕食から毎日糖質を抜くとそれぞれ1日の糖質減少量は70g、100g、170gとなり、HbA1cはそれぞれ0.5%、1%、3%下がることがわかってきた。

この結果を栄養指導に組み込むと、Aさんは1日100g、Bさんは1日130gの糖質を減らす、つまり患者個人でそれぞれ違った減少量を正確に設定できた。患者さんに主な食品に含まれる糖質含有量(たとえばご飯1杯に50g糖質)のリストを渡し、糖質100g減らすためにはどの食品を減らせばよいか理解してもらった。この方法によって2013年には糖質の減らし過ぎを予防できるようになった。


4.同じ50gの糖質でも食品によって影響はずいぶん違う

ところが、患者の食事日記から糖質量を計算し1日糖質100gの減少になるよう指導を行うと(たとえばご飯1杯に50gの糖質、ケーキ1個に30g、おかずに20gの糖質が含まれ、これらを全部抜けば1日100g減少となる)、ヘモグロビンエーワンシーは1%下がるはずなのに1.5~2%も下がる、つまり予想よりはるかに下がってしまう患者がしばしば登場した。これはいったいどうしたことか?糖質50gを含む食品はごはん1杯、小さなどんぶりのラーメン、六切り食パン2枚、ソフトドリンク500ml、饅頭2個、大きめのケーキ1個などであるが、もしかすると、ヘモグロビンエーワンシーへの効果は食品によってずいぶん違うのではないか。

次の臨床研究が2014年から始まった。250人の糖尿病薬を飲んでいない糖尿病患者さんに6ヶ月間ローカーボだけで治療し、その前後の食事日記を比べてすべての食品由来の糖質減少量を計算した。そして、ヘモグロビンエーワンシーの低下に一つ一つの食品がどのくらい影響しているかを解析したのである。糖質を含む食品は膨大な数あるので解析にずいぶん手間取ったが、2019年にその結果が出た。現在、海外誌に投稿中なので残念ながら結果を公表できないが、ソフトドリンク、お菓子、中華麺、パン、米に含まれる糖質を同じ量減少させた場合、数倍もヘモグロビンエーワンシーへの効果が違うことがわかってきた。食品によってはわずか10gの糖質減少でも大きくヘモグロビンエーワンシーを下げられるわけだ。この結果は糖尿病だけでなく体重減量にも応用できるはずなので、今後の肥満にもこの指導法を活用したいと考えている。

苦節15年、わたしたちの経験は多くの海外専門誌に掲載してきた。これら結果のすべてを栄養指導に組み入れ、ゆるやかでも効率的なローカーボ指導法がようやく完成した。患者さんが長い期間続けても楽で安全なローカーボにやっとたどり着けたと思う。



コラム著者 灰本 元 氏 (はいもと はじめ)

医師、灰本クリニック院長、NPO法人日本ローカーボ食研究会代表理事
1953年山口県生まれ。1978年名古屋大学医学部卒業。関東逓信病院(現 NTT東関東病院)内科レジデント、名古屋大学医学部大学院(病理学)、愛知県がんセンター研究所病理部、中頭病院内科(沖縄市)などを経て、1991年に愛知県春日井市に灰本クリニックを開業。診療の特徴は高血圧、糖尿病、ローカーボ食、癌の診断、漢方医学など。

NPO法人日本ローカーボ食研究会は、ローカーボ(糖質制限、低炭水化物)食による糖尿病・メタボリック症候群の治療を安全に、そして有効に実施する為に2011年3月に灰本氏を中心に設立されました。ローカーボ食の科学的な研究、海外文献の紹介、定期的な研究会開催などを行い、それを基に医療機関だけでなく食品・健康機器関連会社、製薬会社、一般の患者さんへ啓蒙と普及を目的としています。ローカーボ食の有効性だけでなく弱点や課題も含めた総合的な科学情報を提供します。現在、東海地方を中心に10の病院・クリニック等が協賛医療機関として登録しています。

灰本クリニック
http://www.haimoto-clinic.com/

日本ローカーボ食研究会
http://low-carbo-diet.com/


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