meitetsu_low-carbohydrate-life_l

[めいてつローカーボ生活] 医師 灰本先生のコラム 17

開催中

腸内細菌と病気 その2 抗生剤による腸内細菌への影響と体重

2015年のネイチャー(Nature)という有名なイギリスの科学雑誌に驚く記事が載っていました。タイトルは「人生初期の抗生剤と肥満」です。これにはマウス(ネズミ)などの実験動物に抗生剤を投薬した研究と乳児期の抗生剤服薬と10歳までの体重の関係を調べた研究などの総まとめが書いてありました。

マウスを使った動物実験では衝撃的な結果が報告されています。肥満のマウスから分離した腸内細菌を正常体重のマウスに移植すると(食べさせる、便移植と言います)正常体重のマウスは肥満となり、痩せたマウスの便由来の腸内細菌を食べさせると痩せるというのです。このような腸内細菌は抗生剤を服薬すると破壊されたりかく乱されたりします。複雑なのは、抗生剤を使ってマウスの腸内細菌を完全に破壊した場合と腸内細菌をかく乱するに留めた場合ではその後の体重変化は真反対となることです。つまり、腸内細菌が完全に破壊されると痩せたマウスへ、中途半端に変化すると肥満のマウスになっていくというのです。この事実は太る、痩せるは腸内細菌が大きく影響しているだけでなく、腸内細菌が抗生剤によって人為的に破壊あるいはかく乱されれば、体型が変わってしまうことを示しています。これらの動物実験の方法をそのまま人体で実験するのは人道的に困難ですが、ヒトでも同じようなことが起こっていると予想されています。

一方、ヒトでは別の研究方法(コホート研究)がたくさん行われています。コホート研究とは住民や患者のデータを登録しておいて、その後の経過を10年単位で追跡してどのような病気が発症あるいは死亡したかを研究する方法です。今回の場合、生後6ヶ月から1歳までの乳児数万人を登録してその後7年から10年後の体重の変化と抗生剤使用の関係を調べています。この方法を使った多くのコホート研究から、生まれて6~12ヶ月までに抗生剤を服薬すると7-10歳に肥満になる可能性が高いという結論となりました。つまり、乳児期の抗生剤服薬は学童になったときの肥満を決定する一因となっていることを示しています。

日本ではとくに耳鼻科や小児科領域で抗生剤の乱用がずっと以前から指摘されています。私が専門とする内科領域では38度以上の発熱患者の95%はウイルスや気温低下による急激な冷えなどが原因なので抗生剤は効きません。一方、抗生剤服薬の適応となる細菌感染症はわずか5%です。つまり38度以上の発熱を伴う風邪や胃腸炎の患者さんの95%はなにもしなくても自然治癒するのです。この原理は小児科でもほぼ同じです。読者の皆様もこの科学的な真実をよく理解して不要な抗生剤の服薬を避けるべきです。抗生剤によって腸内細菌の破壊やかく乱が起こってしまうと、前回の糖尿病、今回の肥満や痩せだけでなく、もっといろいろな疾患を引き起こす確率が高くなります。


コラム著者 灰本 元 氏 (はいもと はじめ)

医師、灰本クリニック院長、NPO法人日本ローカーボ食研究会代表理事
1953年山口県生まれ。1978年名古屋大学医学部卒業。関東逓信病院(現 NTT東関東病院)内科レジデント、名古屋大学医学部大学院(病理学)、愛知県がんセンター研究所病理部、中頭病院内科(沖縄市)などを経て、1991年に愛知県春日井市に灰本クリニックを開業。診療の特徴は高血圧、糖尿病、ローカーボ食、癌の診断、漢方医学など。

NPO法人日本ローカーボ食研究会は、ローカーボ(糖質制限、低炭水化物)食による糖尿病・メタボリック症候群の治療を安全に、そして有効に実施する為に2011年3月に灰本氏を中心に設立されました。ローカーボ食の科学的な研究、海外文献の紹介、定期的な研究会開催などを行い、それを基に医療機関だけでなく食品・健康機器関連会社、製薬会社、一般の患者さんへ啓蒙と普及を目的としています。ローカーボ食の有効性だけでなく弱点や課題も含めた総合的な科学情報を提供します。現在、東海地方を中心に10の病院・クリニック等が協賛医療機関として登録しています。

灰本クリニック
http://www.haimoto-clinic.com/

日本ローカーボ食研究会
http://low-carbo-diet.com/


[めいてつローカーボ生活]トップへ


関連ショップ

ページの先頭に戻る