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[めいてつローカーボ生活] 医師 灰本先生のコラム 14

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肥満パラドックス4 -20歳の理想的なBMIとは?-

これまで“小太り”や“肥満気味”の人の方が癌、脳血管障害、心筋梗塞、肺炎など生命にかかわるほとんど慢性・急性疾患による死亡リスクは“痩せた人”よりも低く(つまり長生きで)、いざという時に生き延びれることをお話してきました。しかし、これらは40歳以上や65歳以上の中高年の日本人数十万人を10年~20年間追跡してわかってきた事実であって、高校生や20歳代の若い人は含まれていません。

20歳のときにどのくらいのBMI(肥満指数、体重kg÷身長m÷身長m)が40~50年後にもっとも長生きかを調べるためにはたいへん息が長い追跡が必要です。このような研究は医学部ではなかなか困難です。40~50年も経つうちに2世代も3世代も教授やスタッフが変わっていき、それぞれの研究者がいつも同じテーマを研究したいと考えているかどうかがわかりません。また、たとえば10万人がどこでどのような病気にかかりどのような病気で亡くなったかを追跡するには年間1億近い予算が必要です。それを40年以上も国から予算を獲得できるはずはありません。

したがって、20歳代の理想的なBMIを知るためには別の発想が必要です。そこで、女性の場合、人類の存続にもっとも重要な胎児死亡、新生児死亡と妊娠前BMIとの関係を調べることにしました。論文を検索するとすでにたくさんの研究が発表になっており、その総合的な解析(メタアナリシス)も発表されていました(2014年)。それを紹介します。


妊婦3万人を追跡した結果によると(右図)、BMI 20前後で胎児死亡リスクと新生児死亡リスクはもっとも低くなり、BMI 25以上ではリスクは高くなっていきます。BMI>30ではさらに高くなります。一方、BMI 20未満の痩せた女性では胎児・新生児死亡リスクはほとんど上がりません。つまり、妊娠適齢期ではBMI 20前後が望ましいことがわかります。

しかし、この研究は直接的に若い人のBMIと死亡リスクの関係を見たわけではありません。先ほど説明したように膨大な期間と研究費がかかるのでそのような研究はないだろうと思っていたのですが、探してみると世の中は広いもので見つかりました。イスラエル軍が徴兵のために17歳時に国民全員を登録してその33年後、つまり50歳までの死亡リスクを調べた研究がありました(2014年)。ご存じのようにイスラエルと周辺のイスラム各国とは長らく戦争状態にあり、17歳のBMIとその死亡リスクは国家的な課題なのでしょう。日本では考えられない発想から生まれた研究です。


その結果を右図に示しました。高校生のときのBMIが男(青)で18~20、女(赤)で19~20がその33年後の50歳の時にもっとも死亡リスクが低かったのです。図の*が付いているのは統計的に有意にリスクが高いBMIを示しています。図では全登録数217万人のBMIを100等分して低い方から並べていますので妊婦のグラフとは横軸の単位が異なっています。そこでBMI 20の位置を図に示しました。そして、重要なのはBMIが20未満に痩せてもそれほど死亡リスクは増えませんが、20以上では太れば太るほどリスクが高くなることです。これは妊婦の胎児死亡・新生児死亡リスクとよく似ています。

これらをまとめると、高校生~20歳代ではどうやらBMI 20前後の人たちが30年後に長生きと言えそうです。これは中年期、老年期BMIとの大きな違いです。

将来死亡リスクがもっとも低いBMIは年代別で異なっているようです。すでにコラムで書いてきたように中年期、老年期で将来もっとも死亡リスクが低いBMIを勘案すると、理想的なBMIとは20歳代で20、30歳代で21、40歳代で22、50歳代で23、60歳代で24、70歳代で25、つまり10年歳をとるにつれて1ずつ太っていくのが理想的と考えてもよさそうです。


コラム著者 灰本 元 氏 (はいもと はじめ)

医師、灰本クリニック院長、NPO法人日本ローカーボ食研究会代表理事
1953年山口県生まれ。1978年名古屋大学医学部卒業。関東逓信病院(現 NTT東関東病院)内科レジデント、名古屋大学医学部大学院(病理学)、愛知県がんセンター研究所病理部、中頭病院内科(沖縄市)などを経て、1991年に愛知県春日井市に灰本クリニックを開業。診療の特徴は高血圧、糖尿病、ローカーボ食、癌の診断、漢方医学など。

NPO法人日本ローカーボ食研究会は、ローカーボ(糖質制限、低炭水化物)食による糖尿病・メタボリック症候群の治療を安全に、そして有効に実施する為に2011年3月に灰本氏を中心に設立されました。ローカーボ食の科学的な研究、海外文献の紹介、定期的な研究会開催などを行い、それを基に医療機関だけでなく食品・健康機器関連会社、製薬会社、一般の患者さんへ啓蒙と普及を目的としています。ローカーボ食の有効性だけでなく弱点や課題も含めた総合的な科学情報を提供します。現在、東海地方を中心に10の病院・クリニック等が協賛医療機関として登録しています。

灰本クリニック
http://www.haimoto-clinic.com/

日本ローカーボ食研究会
http://low-carbo-diet.com/


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